全人類にこれほど親しまれてきた果物はほかにはないでしょう。
味のよしあしを越えて、バナナは古代から食糧として大切にされてきました。数千年も前から、われわれ人類にとって貴重な栄養の糧となってきたわけです。
バナナは栄養価の高い果物です。カロリーとタンパク質はジャガイモと同じくらいです。生産量は熱帯地域でできるものの中で第1位、世界の果物総生産量の中でも、ブドウ、かんきつ類に次いで第3位です。
年中、世界中の産地から輸入され、店頭に並んでいますから旬はあって、ないといえます。
追熟してから食べる
バナナは未熟のまだ青いうちに収穫されます。そして約1週間の追熟期間をおいてから食用にされます。したがって買ったときにまだ青いようでしたら、すぐに食べずに家庭で追熟させるとおいしくなります。
追熟するには、室温ないし13〜15℃の場所を選び、3〜4日置いておくとよいでしょう。果皮が黄色になり、表面が褐色の斑点があらわれてくれば食べごろです。
未熟なときはほとんどがデンプン質で、熟するとデンプンがブドウ糖と果糖に変わり、ぐっと甘みとおいしさを増し、最後にはデンプンはなくなります。
熱帯育ちのため、冷蔵庫は禁物です。バナナは低温にあたると、熟すのを止めいつまでも固いままでいます。このことを果実店では“かぜをひいた”といっています。さらに暗褐色に変色し、とても食べることができないようになってしまいます。
バナナの品種
品種にはいろいろありますが、大別すると三尺バナナ、料理用バナナが一般の生食用になります。日本に入ってくるもののほとんどが生食用です。
今では小型のモンキーバナナも馴染みになってきました。日本には昔から、世界中で最も味がよいとされている台湾産のものが多く輸入されています。このほか産地はフィリピン、南米のエクアドルなどがあります。
国内では奄美大島で栽培されています。
工夫しておいしく食べる
バナナはちょっとした工夫でよりおいしく食べられます。
薄切りしたバナナを皿に盛り、レモン汁か粉砂糖をふりかけるだけで、ぐっと味が引き立ちます。またクリームをのせたり、牛乳と生クリームを半々に割って甘みをつけた中に入れてもおいしいものです。
ただしこのように調理する際、薄く切ったバナナをそのままにしておくと、黒褐色になってきますが、レモンやライム、オレンジなど酸味の多い果汁をかけておくと黒ずむのを防ぐことができます。
(くだもの本 新潮文庫刊より抜粋)
川を見るバナナの皮は手より落ち 高浜虚子
(バナナは夏の季語である)
果物の成熟とエチレン
成熟した果物は大きな果形になり、果色はよく、果肉は軟らかく、糖度が高く、酸が少なくなってきます。これらのおいしさの諸要因がなぜ同時に進行してくるのでしょうか。
この作用を司ってるのは植物ホルモンのエチレンです。エチレンが発生しはじめると成熟作用が働き出し、おいしい果物としての完熟過程が進行します。
エチレンは果実内でアミノ酸の一種から合成されます。このエチレンが果物の多様な形質の成熟現象をどうして引き起こすのかは、まだ充分解明されていません。
|